「地獄の日本兵」こんな本を待っていました。 [好きな本、おすすめの本]
飯田氏はあとがきの中でこう言っている。
それは、勇戦敢闘したある兵士の物語ではなく、餓えて野垂れ死にしなければならなかった大勢の兵士たちの実態です。
重ねて強調しておきますが、これはニューギニアに限りません。太平洋戦争戦域各地に共通していたことなのです。
この本の中で語られる事実は本当に悲惨極まりない。しかし、この嫌なことに目を背けてはいけないと思い続けていた。
氏のあとがきからまた引用する。
嫌なことに目を向けたくない習性が、人間にはあります。嫌なことを忘れることによって、人間は生き延びるのかもしれません。六十年前のことをすっかり忘れるような集団健忘症は、また違った形で、より大きな過ちを繰り返させるのではないかと危惧するからです。今日の日本を覆う腐敗や犯罪をもたらしている禍根は、ここに淵源していると私は考えています。
引用を続ける。
なぜあれだけ夥しい兵士たちが、戦場に上陸するやいなや補給を断たれ、飢え死にしなければならなかったのか、その事実こそ検証されなければならなかったのです。兵士たちはアメリカを始めとする連合軍に対してではなく、無謀で拙劣きわまりない戦略、戦術を強いた大本営参謀こそ、恨みに怨んで死んでいったのです。
この本を読んでいると軍事には全く素人の私でさえも「そんなばかな、」と絶句することしばしば。また、餓え、渇き、マラリヤ等の病気、高山越えでの凍死、渡河での溺死、わずかな食糧、備品を巡っての仲間殺し、人肉食、まさに地獄絵図である。
著者もパソコンの何度キーボードを打つ手を置いて、嘔吐の出そうな思いをこらえたことでしょうと表現している。
またあとがきから引用する。
さらに、ここまでお話ししてきた戦場での体験はそれが異常であれば異常であるほど、親にも妻にも、子供にも、友人にも打ち明けられないものでした。それを語るには本当に、多大な精神力と決心が要ります。戦地での話は、唯一、生き残りの兵が集まる会や慰霊祭などで語り合うだけだったのです。
飯田氏の勇気と決断に心から感謝いたします。
また先の戦争で亡くなった方々の魂のご冥福をお祈りします。