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トムラウシ遭難からほぼ一年 [日記・エッセイ・コラム]

 

トムラウシ遭難 道警、生存者伴い再見分へ

(07/02 06:54)

 大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で昨年7月、ツアー客ら8人が死亡した遭難事故で、道警は今月中にもツアーの生存者に立ち会いを求め、登山ルートの大がかりな実況見分を行う。悪天候による夏山の山岳遭難としては国内最悪の事故から間もなく1年。道警はガイドのほか、ツアーを企画した旅行会社の幹部も遭難の予見性があったのに回避義務を怠ったとの見方を強め、業務上過失致死容疑での立件が可能とみて捜査している。<北海道新聞7月2日朝刊掲載>

過ぎてしまえば早いものです。月日というものは・・・

その後の報告書などについては見ていませんでした。

 

トムラウシ山遭難事故調査報告書(社団法人日本山岳ガイド協会)

http://www.jfmga.com/pdf/tomuraushiyamareport.pdf

 トムラウシ山遭難事故調査報告書(最終報告書 PDF)、日本山岳サーチアンドレスキュー研究機構シンポジウム資料(PDF)

http://subeight.wordpress.com/2010/02/25/20090716-tomuraushi-report/

 

後者の最後にある元アミューズトラベル(トムラウシ山遭難事故を起こしたツアー会社)のガイドを務めた方の資料をはりつける。

以下貼り付け


山形昌宏 元アミューズ・トラベルのガイド、
2007年2月まで2年間務める


私の所見を述べます。これがこれからのツアー登山において、安全面を確保できる材料になれば
幸いです。文章が長くなると思いますので、ちょうどうまくまとめていただいた日本山岳ガイド
協会の「トムラウシ山遭難事故中間報告」を受けて、「遭難事故要因の抽出と考察」の項で揚げ
られている記事の引用形式として記します。
現在、私は個人の登山ガイドとして少人数制ではありますが、たくさんの方と山に登っています。
以下の記述は、私が以前、外部契約ガイドとして、2007 年2 月まで、アミューズトラベルに勤
務していた時点までの約1 年9ヶ月の経歴の中で、私個人が感じたことと、会社側の対応の事実
を元に考察しています。ただし、2009 年の事故当時、または現在では変わっている可能性もあ
りますので、予めご承知ください。
現場での判断は、事故調査委員会の見解とほぼ意見を同じくしますので、私はその中で揚げられ
ている、会社側とスタッフの観点から私の感じたこと述べさせていただきます。現アミューズト
ラベルのスタッフや契約ガイドでは自分にふりかかる火の粉を恐れることもあり、また他のガイ
ドも旅行会社と契約している都合上、口を塞いでいる方も多いと思います。しかし、そういう状
況下では、これからの議論は遅々として進まないと思われますので、内部告発のようになってし
まい、各旅行会社に心象を悪くさせてしまいますでしょうが、それを承知で、このような事故が
二度と起こらないために、敢えて発言するものです。記述がダブる部分があると思いますが、ど
うぞお許しください。

(1)<ガイドの力量に問題はなかったか>
「登山歴、ガイド歴はそれなりにあったと思うが、危急時における対応経験は どこまであった
のか、また、危険予知能力(参加者の状況把握、天候変化予知、時間経過判断など)をどれほど持
ち合わせていたか、疑間が残る。今回、 特にスタッフの判断の迷いや遅れによって対応が後手
後手に回り、パーテイ 全体をどんどんピンチに追い込んでいったと思われるふしがある。」

●アミューズトラベルは、社員と外部契約専属ガイドというものに分かれています。その土地の
登山ガイドをあまり使わないのはコスト面にあると思います。また対客との接客サービスを個人
レベルでアップさせるように教育しています。今回は多田ガイドのみ社員だったと思われます。
私のよく知る吉川ガイドも、松本ガイドも私が知る範囲では外部の専属契約ガイドです。自分の
地域の客をその地域の契約ガイドが連れて行くというシステムです。それゆえに行ったことのな
い山域でも会社側の要請で行かなければならなくなります。あまり断ったり逆らうと仕事が与え
てもらえなくなったり、「それは危険だ」とあまり言い過ぎると私のように辞めなければならな
くなります。

(2)「リーダー・シップとフォロアー・シップに関して認識が薄く、 シビアな状況 下でのパ
ーティ行動の経験が、不足していたのではないか」


●前記のようなガイドの選び方をしているので、実質リーダーが誰かを判断することが難しい状
態です。あくまでも外部ガイドは社員には逆らえないのが現状でしょう。社員はあくまでも会社
の利益を優先に動きます。そこに危険が迫っていた場合でも、早く行動するように急かされる場
合もあります。社員はガイドであると同時に添乗員という立場で、旅行というものを円滑に遂行
することが義務付けられます。その間で社員とガイドとは壁があり、ガイドが山に長けている場
合でも、添乗員の気を使う部分があります。そういった意味においては、登山を目的とした旅行
会社のツアーというものは、登山ではなく旅行です。しかし危険な状態になれば、旅行という段
階では済まされなくなり、やはり、山の経験豊富なガイドが判断を下すべきだと思います。客に
対しても同じで、あくまでも「旅行会社のお客さん」なので、間違った行動をしていたり、全体
に命令を下すといったことに躊躇します。それはパーティ(仲間)ではないのです。

(3)「夏山といえども危急の事態を想定し、その対応についてスタッフは事前にどれだけ真剣
に打ち合わせをし、緊張感を共有していたか。また、危急時の連絡方法についての共通認識を持
ち合わせていただろうか。」

●遭難時、緊急時のマニュアルは作っていると思います。今回の遭難ではそのマニュアルでは、
通用しないくらいの状態だったと判断します。やはり、登山に対しての危機管理が甘いように思
わざるを得ません。また、ヒサゴ沼から稜線に上がった時点で、ガイドの誰も、引き返すことを
口にしなかったのは、次に自社のパーティが入ってくる、とか、飛行機が遅れると会社や「お客
さん」に迷惑がかかるといった、安全面とは逆の気遣いがあったと思います。それゆえに「なん
とかなるか」「ガイドが3人もいるのだから、誰かに任せればいいか」といったような、お互い
に責任のない部分があったのではないでしょうか?

(4)「低体温症に関する知識は、書物で読んだことがある、といったレベルではあったと思う
が、特に夏山でも低体温症が起こり得るという可能性については、 それほど深刻には認識して
いなかったのではないか。」

●それはそうだと思います。3名が過去にどのような山歴の持ち主か、正確には知り得ませんが、
山岳会で鍛え上げられた人間とは違い、ツアーガイドというものは、その辺の経験が少なかった
のではないかと思います。山は自分の経験によって危機意識がわかると思います。「はたして、
このまま行けば危険なのかどうか」「突っ込むか、引き返すか」その判断は経験のある(いくら
経験があっても山に行かない期間が長ければ感覚は薄れますが・・)登山家なら必ずあるはずで
す。稜線で引き返せなかったのも、北海道の山をよく知らないガイドが2人いたこと、よく知っ
ている人間が社員の添乗員兼ガイドであったこと、言いたくても言えない環境など、複数の要因
が考えられます。

(5)「悪天候(風雨、濃霧、霙、風雪など)下でのツアーとしての行動経験が、どれほどあった
のか。それによって、危機的状況下での参加者に対するチェックやアドバイスの重みが違ってく
るだろう。今回、そのようなこまめなケアがなかったのが、事態を悪化させたのではないか。 」

●前述のような事由から、「これは遭難だ」と気づくまでには、各ガイドの判断力の遅れ、無さ、
客も行けるだろうという過信。または細かいチェックやアドバイスをするだけの余裕がガイド側
になかったのかもしれません。それは低賃金で契約し、会社側に利用されている、外部ガイドの
意識にも反映するものがあったのかもしれません。ちなみに私がいたころの日当は、11500
円/日でした。ただ、思ってはいけない事ですが、そんな低賃金で命がけの仕事をする気持ちは
薄れて行くのかもしれません。これは客とは何の関係もないことで、自分がそれをヨシとして契
約したのだから、自分(ガイド)の責任ですけどね・・あくまでも心情的な問題です。仕事はし
っかりしなくてはなりません。

(6)「同じく悪天候下で、ガイドが自分自身の体力をどれほどと認識していたか。 また、ス
タッフと参加者の経験差、体力差をどれだけ認識していたかが、一 つのポイントであろう。今
回の参加者は50代の2人を除き、残り13人がす べて 60代である。特に 30代のガイド 2人と参加
者の差は大きく、参加者の 疲労度を若い 2人がどこまでシビアに認識していたか 、疑間が残る。 」

●前述とダブりますが、私が把握する限り、アミューズトラベルのツアーというものは、疲労度
の把握よりも(もちろん倒れるような疲労度は別ですが)行程管理の方が大切なイメージを持っ
ています。きちんと遂行することに重点をおく気持ちが強く、またガイドがあまり言えない環境
であり、お客さんのことを気遣う余裕がなかったのかもしれません。

(7)「参加者に対する状況説明を常に行っていたか 。 一日ごとに、 あるいはポイントごとに、
日程やコース概要 、天気概況 、行動の見通しなどをきちんと説明 し、 ツアー登山といえども、
参加者にパーティのメンバーとしての自覚を促す必要がある。 」

●それは私が行っていたころは、ほとんどありませんでした。
ほとんどのお客さんは、あくまでも「客」として来ている意識の人が多く、知らない人の寄せ集
めであり、会社に連れて行ってもらっている、という意識は明らかにあります。お互いの結び付
きも無い、単なる集合体であり、それはパーティとは呼べず、個々が個々のために歩いているだ
けのことであり、会社側もその結びつきに対してどうのこうのは言いません。ここに旅行会社の
企画する登山ツアーの危弱性があると思われます。

(8)「参加者のコンディション (経験 、体力、疲労度 、体調など)をどれだけ把握していたか 。
それらを毎日チェックし、 スタッフ 3人で共有していることが 大切だったのではないか。」

●そうだと思います。スタッフ同士も知らない関係というのも問題で、お互いにお互いを牽制し、
気を使っていたのではないでしょうか。もっとも、それと仕事は関係ないので、参加者の状態を
把握するのは当たり前の勤めですが、それを十分に把握していたのなら、過信は生まれないと思
います。また客側も自由に言える環境を最初に作るべきではないかと思われます。きちんと判断
し最終的に決めるのはリーダーではありますが、客が言えないような環境はどうかと思います。

(9)<ツアー会社の企画や運営、 危機管理に問題はなかったか >
「アミューズトラベル社 (以下、アミユーズ社)では、現場でのあらゆる判断、 対応はすべてガ
イドに任せており、何かあれば会社が全面的に責任を負う考 えと言う。 しかし、今回のような
ツアーは、旅行業務の一環とはいえ登山活 動であり、登山としての安全性を重視した判断をガ
イド側から主張できるよ うな体制にあっただろうか。また、会社側でそのように指導していた
かどう か、が問われる。 」

●前述の通りです。ガイド(外部契約専属ガイド)は、あくまでも下請けであり、たとえ会社側
が、そのように言っていたとしても、外部ガイドが言えないのが現状です。また契約書は私がい
た頃は、「ガイド側に過失がない場合」という事項があり、過失が無い場合は会社が全面的に責
任を負うというものでした。しかし、ガイドの過失というものは、どこでどのように測られるの
でしょうか?そのへんが非常に曖昧だと思います。
また、専属契約としていることで、他のガイド(個人ガイド)などはできず、かといって生活を
保証されるものではありません。現に冬場などはほとんど仕事は無く、他のガイドもできず、と
ても契約ガイドだけで食べて行くことはできません。私の知っているガイドは会社に内緒で個人
ガイドをして、それが会社にわかり、夏場の忙しい時期でも仕事を回してもらえなかった・・と
いうこともありました。「会社に体良く利用されているだけの存在」というイメージの中で、そ
のような気持ちがあったとしても言えず、逆らえば切られる、そのような人間が、本当に客の命
を守れるのでしょうか?会社のそのような体制にも問題があると思います。

(10)「今回のような事態は会社、ガイドともに想定外だったのではないか。山での 危機管
理については社内にも専門家は少なく、年 3回実施されることになっ ている研修会においても、
事故対策は転・滑落や熱中症に集中しており、低 体温症は取り上げられていなかったという。」

●年3回(私がいた頃は年1回だったと思いますが)の研修会も参加できるガイドもいればいな
いガイドもいる。また、その説明もその場限りのもので、とても充実したものとは言い難いです。
すべてはガイドの自主性に任されています。

(11)「そもそも低体温症に対する危険認知が、社内になかったのではないか。2002 年の事
故後も、当該のトムラウシ山コースを含めて、低体温症の危険を啓蒙 していない。 」
●上記のようなことなので、たぶん低体温症に対する危険も知ってはいなかったのではないかと
思います。

(12)「アミューズ社は 1991の創業以来、年々急成長し、危険度の高い登山部門にも進出し
てきた。その成長ぶりに対して、社内やガイド・スタッフのリスク・ マネージメント体制が対
応できていなかったのではないか。 」

●アミューズトラベルはあくまでも「旅行会社」です。
私がいた頃は、自分が意識している分、会社に対し山の危険性、ツアー登山の脆弱性を少なから
ず言い続けました。また、それまでに起きた登山中の事故や遭難に対しても、検証し原因を究明
する必要があると言いましたが、なかなか聞いてもらうことができませんでした。今回の事故に
しても、私がいた頃の「このままいけば必ず大きな遭難事故を起こしてしまう・・」と言った危
惧が現実のものになりました。私との契約を一方的に切ったのはアミューズ側といえ、私がもっ
と言っておけば・・と、ショックで、少なからず責任を感じております。彼ら(アミューズトラ
ベル)は自分に都合が良く、利益を上げるものに対しては反応しますが、そうでないものに関し
ては人の話を聞こうともしない、といった印象があります。私の認識が無いだけで、組織という
ものはそういうものか・・?今までに、あと何店か契約していた(しようとしていた)旅行会社
もそうなので、旅行会社という体質上そうなのだと、今では諦めていますが、それでは客の命が
危険にさらされることになり、そういう会社は登山ツアーなどは企画すべきではない、というの
が私の考え方です。ある時に「2泊3日では客にとってきつすぎる、3泊4日にすべき」と言った
時でも、「2泊3日の方が客が集まる」という理由で却下されたり、ある旅行会社では「客25名
に対し、2名のスタッフでは少なすぎる」と言った時でも、「必ず3名つける」と言っておきな
がら、当日は2名だったということもあります。あとで聞くと「予算の関係」と言われましたが、
登山の経験や危険をあまりにも知らず、机上で企画をしている人が多い、そういう旅行会社は登
山ツアーを企画するべきではないという私の気持ちも、理解いただけると思います。もちろん、
その辺をきちんとしている旅行会社もあるとは思いますが、旅行会社全般で、今以上に厳しい基
準というのを設けていただかないと、今のような危険意識がバラバラの状態では、第二第三のト
ムラウシが起こってしまうと思います。何年か前にできたガイドレシオにしても徹底されていな
いのが、現実ではないでしょうか?

(13)「今回のツアー企画そのものの脆弱性 (参加者のレベル把握不十分、簡素な食事、エス
ケープルートなし、予備日なし、避難小屋で幕営の場合のリスク、 ガイドの土地勘なし、など)
に対して会社は認識し、それを担当ガイドに伝えてなかったのではないか。 」

●それもすべてガイド任せです。
アミューズ社でのガイドとしては、山行の1ヶ月ほど前に依頼を受け、了承すると、前日か前々
日に客と同じ(かそれに書き加えたもの)行程表が送られてきます(私がいた頃の話です)それ
では、コースを把握することも、何人が参加されるのかもまったくわかりません。時間の少ない
中で以前に言った記憶をたどりながら、チェックするのがやっとで、エスケープルートや共同装
備といったこともガイド任せなので、とてもそんな余裕がない、というのが正直なところでしょ
うか。それでも私は、前もって準備しなくては危ないと思い、事前に事務所に聞いていましたが、
早すぎる(1週間前)とまだわからない・・ということもありました。すべてギリギリに作るの
です。それも添乗員が作って知らせるだけのシンプルなものでした。

(14)「天候悪化に伴うリスク回避に対する具体的な判断基準が社内になく、 したが って、
ガイドにも明確な指示として出されていなかったことが混乱を招いたものと思われる。特に今回
は夏山ということもあり、特段の注意は与えられていなかった。 」

●前述のようなことで、リーダーの所在がはっきりしていなかったのだと思います。亡くなられ
たので、話はできませんが、吉川リーダーもその時点では、弱っていて、判断できなかったので
はないか?吉川リーダーがダウンした場合はだれが指揮系統を取り仕切るのか・・それもはっき
りしていなかったものと思われます。

(15)「今回のようなツアーを実施する前に、スタッフ間で危機意識や危急時対応について共
通認識を持つため、 しっかリミーティングするよう指導が徹底されていなかった。また、ガイ
ドは今回のコース上で起こり得るリスクについて、 参加者に説明していない。 」

●ツアーの前日まで、何人来るのか、どんな人が来るのか、だれがスタッフなのか、外部ガイド
がわからない状態では、スタッフ間で話しあうのは物理的に不可能です。当日に会って次の日か
らの行動をチェックすることはできるとは思いますが、急すぎる、それでは危ない、といったき
ちんとした危機意識を持ったガイドがいなかったと思います。ガイド間もどっちかというと「仲
良しクラブ」的なノリなので、なんとなく仕事で山に行っている、という気持ちがつよかったの
では無いでしょうか?

(16)「危急時の対応について、アミューズ社としては、 とにかく 「無理して突っ込むな」
「そのパーティで一番弱い人を基準に行動しろ」 と指導していると言うが、ガイドに徹底され
ているとは言えない。「どんな状況下でも日程を忠実に実行するのが良いガイド」という極端な
考え方があるが、それは山では通用 しない。危機的状況下ではまず何を優先させるべきか、改
めて傘下のガイド に徹底させる必要がある。 」

●その通りだと思います。しかし前述のような様々な理由から、ガイド側の仕事に対するポテン
シャルの低さや責任感の無さが露呈してしまっているように思われます。ガイド側ももっと徹底
して、その辺の意識を高める必要がありますね。しかし、会社に言えば、仕事がなくなるとか、
辞めさせられるとか、といった下請けの弱さがあり、なかなか言えないでいるのかもしれません。
私はそれが嫌でやめることを決意したのですが、それよりも早く会社側から言われた次第です。

(17)「ヒサゴ沼避難小屋からの出発という判断は、予備日がないので停滞はできない(1日延
びれば追加料金が発生する)、 続けて沼ノ原から同社の別パーティ が入ってくるので、小屋を
空けなければならない、などという考えが、ガイドの頭の中に浮かんだのではないか。会社は想
定していないと思うが、ガイドがプレッシャーとして感じることはあるだろう。 」

●もちろんあります。それで引き返せなかった(または引き返すことを言えなかった)と言って
も過言ではないでしょう。

(18)「ツアー登山に予備日はない、というのが業界の常識というが、そうは言っても、万が
一の場合は停滞を余儀なくされ、当然ツアーを延長せざるを得ない ケースがあるだろう。その
場合、100%ガイド判断に任されているのかどうか。 この判断はガイドに大きなプレッシャーを
与えるが、彼らに精神的な予備日 (自己裁量できる余裕)が持てるよう、指導していく姿勢が必
要だろう。 」

●その通りですね。でもあくまでも旅行会社・・それができるかどうか・・です。ある時にその
問題について話した時も、「旅行会社というのは旅程管理というものに支配されている。その通
りに動かなければならない」と言われました。でもその時に、「それなら、旅行会社は登山をし
てはいけない・・」と思った次第です。また、このところの不況で、各旅行会社はしのぎを削っ
ていますが、低価格競争を登山にだけは持ってきていただきたくないです。各ガイドや旅行会社
も自分たちがしている仕事に、もっと誇りを持たなければ、と思います。儲かればいいという考
え方も山には持ってきて欲しくありません。今までもあまりにも危険な登山ツアーを、山中でた
くさん見てきました。他ツアーにおける遭難現場にも遭遇したり、ツアー関係者から「うつのツ
アーで今年は○人亡くなった」という話を聞いたこともあります。それらがどうしてニュースに
ならないのか不思議ですが、どうか安全を金銭と置き換えることだけはしないでいただきたい。
旅行会社もお客さんの側も、そろそろ気づいてもいい頃ではないでしょうか?

(19)「危急時の連絡方法が心もとない。電波が通じない山域での連絡方法に、明確 なルー
ルがなかったと思われる。また、トランシーバーは持参を義務付けて いると言うが、使われた
形跡がなく、ラジオも持参していない。」

●私がいた頃は、トランシーバーはあくまでも低出力のパーソナルで最前と最後尾のスタッフが
もって通信するものだったと記憶しています。義務付けられているとはいえ、もし緊急用の高出
力のトランシーバーがあれば、それは会社にあるのでは無く、ガイド個人の持ち物と言う事にな
ります。他に非常用としてロープやツェルトも義務付けられていたと思いますが、それも個人ガ
イドの自品です。持っていないガイドはどうすればいいのか・・という話もなかったと思います。

(20)「避難小屋泊まりを前提としたようなツアー募集は、避難小屋の本来の使用目的から逸
脱している。人数分のテントを確保していると言うが、幕営による 参加者の負担をどの程度認
識していたのか。特に慣れていない人、あるいは 高齢者にとって、悪天候下での幕営は大きな
負担となり、翌日の行動に支障 が出ることもあるだろう。」

●私の友人の北海道のガイドからは、避難小屋の場所取りをアミューズは置いていたと聞いてい
ます。私がいた頃も北海道に1ヶ月ほど滞在して、避難小屋の場所取りをする人間がいました。
それが現在でも事実として起こっているとすると、本来、緊急時の避難用として使われるべきの
避難小屋を普通の山小屋のように利用していたばかりではなく、場所取りをして自分の家のよう
に使用していたことに関しては、元在籍していた人間としても恥ずかしく思います。なぜそのよ
うなことができるのか・・登山というものをしらなすぎるし、モラルの無さに愕然とします。人
数分のテントを持っていくのは常識ですね。しかしながら、高齢者にとって、幕営することでの
体力を考えるなら、そのような事に耐えられる人しか連れて行っては行けないと思います。1泊
ならまだしも2泊もテント生活をすれば、どれくらい体力が消耗するかは、わかっていそうなも
のですが・・それもたぶん解っていなかったと思います。悪天だから避難小屋を使うのはそれは
それで良いとしても、客の体力面を考えるなら、その日はヒサゴで停滞して欲しかった。また、
そのような山行は多勢での山行はするべきではない・・ということになります。

(21)「ガイドの選び方に問題はなかったか。ガイドの選定方法としては、参加者の多い支店
からガイドを出すことがアミューズ社の方針になっており、今回、 広島と名古屋からそれぞれ
リーダーとサブガイドを出している。ただ、2人とも今回のコースは初めてで、しかもスタッフ3
人とも各々面識がなかったという。コース経験の有無は、ガイドの絶対的条件ではないが、万が
一を考えると不安な構成である。今回のようなロングコースでは、接客力優先ではなく、危機対
応能力を中心に、厳しく選定する必要があったのではないか。 」

●前述の通りです

(22)「ツアー登山の定着とともに、「ツアー登山客」という層が生まれ、「ツアー登 山ガ
イド」というカテゴリーができ上がりつつある。多くの人々が気軽に山 を楽しめることは素晴
らしいことではあるが、そこに潜むリスクに対してツ アー会社もガイドも敏感でなければなら
ない。 」
●そのような環境つくりにがんばりたいですね。

(23)「今回のような、状況によってはハードになるコースについて、参加者の参加基準は妥
当だったか。星印で表わしたランク付けも意味はあると思うが、山行経験の中身が問題である。
ハードなコースや危険度の高いコースでは、もう一歩踏み込んだ顧客管理が望まれる。 」

●その他多勢から一般募集する形のツアーというものでは、非常に難しいと思います。また高齢
者の場合は、前に行った山歴を聞いたとしても、体を壊されていたり、山行の間隔があいていた
りと、当日の体調を計るのは個人ガイドをしている自分でも難しい場合があります。アミューズ
は年齢による規制を付けているみたいですが、それだけで、個人の力量は計り知っていないと思
います。やはり当日の細やかな気配りが大切だと思われます。今回のように悪天の時は、特に・・
です。

(24)<参加者の力量と認識に問題はなかったか>
「このツアーに参加できるだけの経験や体力が備わっていたのか。アミュ−ズ 社の参加基準では
星4つ(星5つが最高)で、参加者はすべてその基準をクリアしているというが、悪天候下における
経験や体力となると、一部の人は 不足していたのではないか。 」

●アミューズはあくまでも旅行会社ですので、客がある一定の基準をクリアしていたら、参加し
ていただいた方がいいに決まっています。商売ですから、商品を買いに来た客に売らないことは
あまり考えません。よほど、歩けない人以外は断らないでしょう。その部分にも、そのような旅
行会社が登山ツアーをする(その他大勢を相手にする)危なさが潜んでいます。
悪天や地形の状態の変化でレベルは変化します。当然、それをも考慮して動いていたのではある
でしょうが、当日はその部分でも余裕がなかったのでしょうか・・

(25)「参加者は、 自分の体カレベルについてどの程度客観的に認識していたのか 。一般の
登山者 、特にある程度組織的に訓練された登山者と比べて 、 自分はどの程度と分析していただ
ろうか 。 今回のような悪条件下では、 とりわけその差に開きが生じると思われる。 」

●いわゆる山岳会などに行きたくない、山岳会の山行にはついていけない、方が登山ツアーに参
加されると思います。気軽に参加でき、スタッフも優しい・・すべてを用意してもらって、コー
スも決めてもらい、地図も持たずに歩ける。時には荷物も持ってもらえる・・客はただリーダー
が歩く後ろをついて行けば、頂上に連れていってもらえる。
という意識で参加される方が多いと思います。ただ、今回の場合は縦走ということもあり登山口
と下山口が離れていて、またトムラウシという非常にアクセスが悪いところということで、個人
でもいけるがツアーに参加した方が便利、ということで参加された方は多いのではないかと思い
ます。そういう「個人でも・・」というお客さんはまだしも、常にツアーを利用していれば、山
のピークはたくさん踏めるが、山に関しての知識や技術などは何もしらない、という方が多いの
が現実だと思います。やはり来られるお客さんとて、ひとりの登山者には違いないのだから、き
ちんと訓練する必要はありますね。判断も言いにくいとはいえ、今、自分たちがどういう状態で
あるか、ということを冷静に理解できる必要があります。そういう(面倒なこと)を言うと客は
離れる・・とか、客はもっと気軽に参加したい・・とか、思う意識が旅行会社側にもあり、なか
なかツアー登山では難しいかもしれませんが、そのへんもこれからは、個々のレベルで徹底して
いただきたいと思います。ただし、それをきちんと指導できる経験豊富な、客のことを大切にで
きる本当のガイドが必要ですけどね・・

26)「アミューズ社のツアーで 、 同じコースを、 ネパールなどと同様のトレッキング・ス
タイル (食料や寝袋 、マットなどは会社で持参 )で歩く「らくらくプ ラン」があるが 、それと
比較して 、体力的な不安よりも経済的なものを優先しなかったか 。そして 、その自己分析によ
って 、冷静に山選びができていた のかどうか 、疑間が残る。 」

●それは、ツアーに来る客の立場では、難しいと思います。前述のように乗っかれば連れていっ
てもらえる、というのがツアーの利点だと思いますから・・登山では、そういう考え方はダメな
んですがね・・

(27)「ツアー登山というシステム (会社やガイド)に対する依存度が高過ぎて 、 自立できて
いないのではないか 。 ツアー登山といえども、 フィールドは一般の登山と同じである。 時に
は厳しい自然が相手であるから、登山とは、最終的 に自己責任が基本となる、 という認識を持
っていたかどうか 。 」

●それも客によると思いますが、ツアー登山に対する依存度は相対的に大きいと思います。現に
それについて行けば、体力があれば「登れてしまう」のですから、まぎれもなく自分の足で歩い
て登ってるのですから。でもそれは本当は、自分の力ではないんだよ・・と思っている方は、数
少ないでしょうね。それゆえに高齢者が増えるのもうなずけます。
高齢者は経済的にもゆとりがあり、時間とお金はある。無いのは体力だけ、というときに一番い
いのはツアー登山です。中には私のような個人ガイドを頼まれる方もおられますが、私は個人的
な結びつきを大切にしていますので、パーティというもの(個人的な結びつき)を嫌われる方は
やはり気楽なツアーに行かれると思います。

(28)「ガイドを信頼し、その指示に従って行動するのが基本のツアー登山といえども、参加
者自身でも現在地の確認や時間管理 、自身の体調把握など、登山パ —ティの一員として 、認識
していることが求められるはずである。 今回はそのあたりの認識不足が見られる。 」

●上記のようにパーティというもの自体をヨシとされない方もおられます。あくまでも客であり、
個人である。そんな中でも今回は仲間同士助け合った人がおられたのは、人間として本当に素晴
らしいことだと思います。ただ、言えない状況は分かりますが、登山をある程度知っておられる
なら、ヒサゴ沼に引き返すことを誰かが言って欲しかったと思いますね、パーティの一員とし
て・・

(29)「一般にツアーの参加者は、単独では山に行けないのでツアーに参加する、 と いう人
が多く、パーティとしての参加意識が薄く、時には参加者同士の繋がりも避けたりする傾向があ
るようだ。 これでは、 ひとたびガイドが機能しなくなると、パーティの瓦解という最悪の事態
に繋がっていく。 今回、 お互い に助け合う姿が一部に見られたが 、寄せ集め集団といえども、
いったん行動 を開始したら一つのパーティである、 という強い認識を持ちたいものである。 」

●そのとおりですね。パーティ=仲間ですから

(30)「危急時にいかに対応するか経験や知識に乏しく、 いわゆる 「ツアー登山慣れ 」して
いる参加者が多かつたのではないか 。 いたずらにピークをコレクション するだけでなく、登山
経験を重ねるごとに一つ一つ知恵を付けていくことが 、いざという時のための、セルフレスキ
ューのスキルアップに繋がるだろう。」

●そのとおりです。私も私の客の中にはそういった方も居られます。これからしっかりと認識し
ていただくように、ご指導させていただきたいと思います。

(31)「参加者はほとんど、低体温症の知識は持ち合わせていなかった。 また 、 2002年夏の、
同じトムラウシ山における低体温症による遭難事故を知らなかった。 」

●これは、天気が悪くなることが予想されているのだから、ツアーが始まる前に旭岳側の宿で、
危機意識としてリーダーが全員に言っておくべきです、事前ミーティングまたは講習会として時
間をとるべきだと思います。しかし今のアミューズ社の体制では時間的な余裕が生まれてこない
のではないかと思います。

(32)「星 4つの参加者だけに、装備に関しては特に問題なかったと考える。 ただ 、 その装
備やウェア類を危急時にいかに活用するか 、 という知恵については不 足していたようだ。 一
方 、今回の食事システムも独特だが 、参加者の食料計 画の貧弱さが気になる。ザックの重量が
増えるのが不安だったのだろうが 、悪天候下ではエネルギー不足と思われるような内容だった」

● これも事前の装備チェックの時に確認すべきこと、または講習会の中で使い方などの講習も
するのが望ましいですね。

アミューズトラベルは、今回亡くなられた方へのしっかりとした責任を取り、今後の山行におい
て見直すところがたくさんあります。私としては、事故後全山行を取りやめ、全ての検証、全て
の改善点を社内で検討し、少なくとも喪が明けるまでは犠牲者の喪につくし改善点を洗い出す必
要があると思います。当然、そのような意識の徹底や、管理指導に関しては、事故後は何らかの
対策をしていますが、果たしてそれが徹底されているのでしょうか?知らず知らずの内にこの事
故が忘れられ、また同じような意識で山行を続けることが、また第二第三のトムラウシを起こす
ような気がしてなりません。アミューズトラベルのみに限らず、このことは各旅行会社、各ガイ
ドが肝に銘じ、これからの山行に対し「きちんとしたもの」を作っていただきたいものです。
長くなりましたが、以上を私の所見とさせていただきます。
添付の報告書分を受けての私の感想と共に、どうぞよろしくお願いします。


貼り付け終了

 

北海道という緯度の高い地域の山岳、気象、参加者、装備、力量、ガイドの資質、力量会社の姿勢、それぞれの要因を細かく上げればキリがないくらいあると思われるが、私には儲け主義、営利追及を自然を相手にする山岳ツアーにまで持ち込んだことが一番の大きな原因のように思える。

私は教育、福祉、医療(薬漬け、もうけ主義でない真の意味での医療)に決してもうけ主義を持ち込んではならないと思っているが、自然に対しても同じであると思っている。

命、自然も大きな命である。生命と功利主義は絶対相容れないものである。

人間が心を功利主義に奪われるなら、最終的には自分の命を失うのである。

 

 

 


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